室内の壁にひび割れを見つけると、建物の強度に関わる重大な問題ではないかと、誰もが不安になるものです。しかし、壁紙に現れるひび割れのほとんどは、建物の安全性に直結しない軽微なものであることが多いのが実情です。とはいえ、中には注意が必要な危険なひび割れのサインである可能性もゼロではありません。では、放置しても大丈夫なひび割れと、専門家への相談を検討すべきひび割れは、どこで見分ければよいのでしょうか。まず、心配のいらないひび割れの多くは、幅が〇・三ミリ以下の髪の毛のように細いもので、ヘアークラックと呼ばれます。これらは主に、壁紙の下地である石膏ボードの継ぎ目が、温度や湿度の変化で動くことによって生じる表面的なものです。特に、部屋の角や窓枠の周辺にできる直線的なひび割れは、このケースである可能性が高いでしょう。見た目が気になるかもしれませんが、構造的な問題はないため、急いで対処する必要はありません。一方で、注意すべきひび割れにはいくつかの特徴があります。一つ目は、ひび割れの幅が広く、名刺の角などを差し込めるほど(一ミリ以上)開いている場合です。また、ひび割れが時間と共に明らかに広がったり、長くなったりしている場合も要注意です。これは、建物の不同沈下など、構造的な問題が進行している可能性があります。二つ目は、ひび割れの発生場所です。複数の部屋の同じような位置にひび割れがあったり、建物の基礎に近い壁に斜め方向の大きな亀裂が入っていたりする場合は、建物全体の歪みが原因かもしれません。三つ目は、ひび割れ以外の異常を伴うケースです。ひび割れの周辺が湿っていたり、変色していたり、カビが生えていたりする場合は、雨漏りや内部結露の可能性があります。放置すると建材の腐食につながるため、早急な原因究明が必要です。ひび割れを発見したら、まずは慌てずにその幅や長さ、場所を記録し、定期的に観察することが大切です。そして、もし危険なサインが見られるようであれば、迷わず管理会社や専門の業者に相談しましょう。